「ふるさと納税」のキホン(前編)

今回もご覧いただき、ありがとうございます。

今回は、最近CMなどでよく見かけるようになった「ふるさと納税」について書くことにしました。

皆さまは、「ふるさと納税」をしたことがありますか?

私は、過去に1回だけ「ふるさと納税」をしましたが、元々小樽市の職員ということもありまして、その寄付先は「小樽市」です。

今回は、先週12月7日(水)に、札幌消費者協会「くらしと金融問題研究会」で務めた講演の一部内容をご紹介する形で、「ふるさと納税」のキホンについて書いていこうと思います。

1 「ふるさと納税」の現在まで

「ふるさと納税」は、全国の自治体の中から自分が貢献したいと思う自治体に対して寄付ができる制度です。

2008(平成20)年4月の地方税法等の改正により、同年5月から 制度がスタートしました。

この制度は人口減少による税収の減少への対応や、地方と大都市の格差是正を目的とするものであり、西川一誠福井県知事(当時)などから提唱されたもので、2006年頃から導入議論が高まりました。そして2007年(平成19年)5月、2006年(平成18年)に発足した第1次安倍政権で総務大臣として初入閣した、菅義偉総務相(当時)が創設を表明しました。

次に、「ふるさと納税の受入額および受入件数の推移」を見てみましょう。

【図1】ふるさと納税の受入額および受入件数の推移

このように、寄付者に対して返礼品を送る自治体が増え始めた2014年ごろから、寄付件数や寄付額が急激に増加していることが分かります。

また、今年度の寄付額は1兆円を超えるのではないかと、様々な報道で言われています。

ただし、図1の出典である「ふるさと納税に関する現況調査結果」(総務省)から推定した、2021年度に「ふるさと納税」を行った人の数は、「約740万人」とされています。

これは日本の人口の約6%であり、そう考えますと、「ふるさと納税」のマーケットは今後も拡大する可能性があると言えるのではないかと思います。

2 「ふるさと納税」の特徴とは

次に、「ふるさと納税」の特徴を整理してみましょう。

「ふるさと納税」とは…

「好きな自治体に寄付できる制度」

・自分の「ふるさと」以外にも寄付できる(言い換えれば、全国どこの自治体でもOK)

・複数の自治体に寄付できる

・税金の「使い道」を指定できる(様々な「使い道」から直接選べる、唯一の「税金」)

さらに…

・所得税や住民税が安くなる

・寄付先の自治体から返礼品がもらえる場合がある

このように、「税金が安く」なったり、「返礼品がもらえる」のは、本来は「おまけ」の話のはずなのですが、上述したように返礼品を送る自治体が増え始めたことによって、寄付件数や寄付額が急増しているということは、何とも言えないものがあります。

3 「ふるさと納税」の仕組みとは

では、なぜ「ふるさと納税」が、ここまで急激に広がったのでしょうか。

それはやはり、

寄付した金額から2,000円を差し引いた額の税金が戻ってくる

(言い換えれば、自己負担額2,000円で、全国各地の自治体から様々な返礼品を受け取ることができる

ということに尽きるのではないかと思います。

※ただし当然ではありますが、戻ってくる税金額には上限があります。またその額は、収入額や世帯構成などによって、一人ひとり異なります。

ここで、具体的に「ふるさと納税」の仕組みを図で見てみましょう。【図2】をご覧ください。

【図2】「ふるさと納税」の流れ(確定申告をする場合)

しかし、この流れが煩雑ということで、

2015年に「ワンストップ特例制度」ができました。この場合の流れは【図3】のようになります。

【図3】「ふるさと納税」の流れ(「ワンストップ特例制度」を利用した場合)

ただし以下のような場合は、「ワンストップ特例制度」は利用できず、確定申告により手続きを行わなければならないので、注意が必要です。

「ワンストップ特例制度」が利用できない主なケース

① 自営業者や年収が2,000万円以上の会社員、2か所以上から給料を受け取っている会社員など、元々確定申告をしなければならない方

② 医療費控除や住宅ローン減税の利用などにより、確定申告を行う方

③ 6つ以上の自治体に寄付をしている方

また、確定申告を行った場合には、「ワンストップ特例制度」で申告済みの内容は全て取り消されます。

このため確定申告を行う場合は、「ワンストップ特例制度」で申告済みの内容も含めて申告することを、忘れないようにしましょう。

4 おわりに

本日は「ふるさと納税のキホン」と題して、「ふるさと納税」の特徴や仕組みなどを書きました。

繰り返しになりますが、やはり「ふるさと納税」の魅力は、

自己負担額2,000円で、全国各地の自治体から様々な返礼品を受け取ることができる」というところにあるのではないかと思います。

このことを考えますと、「ファイナンシャル・プランナー」としての私としては、

やはり有効な節税策として、皆さんに「ふるさと納税」をお勧めしなければならないのかな、とは思います。

しかし、私自身は同時に納税者でもあり、また元自治体職員でもありますので、その立場から、この「ふるさと納税」を見ますと、別に思うところもあります。

このことについては、字幅の関係もありますので、来週改めて書こうと思います。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

来週もよろしくお願いいたします。