来年からの「NISA(ニーサ)」、何が変わるの?

ご覧いただき、ありがとうございます。

前回は「令和5年税制改正大綱の2大ポイント」を書きましたが、今回はその「第1のポイント」である「小額投資非課税制度(NISA)の抜本的な拡充」について、書いていこうと思います。

既にメディアなどでも大きく報じられておりますとおり、この「NISA」、2024年(すなわち来年)の1月から大きく変わる見込みになっております。

今回は、「NISA」がどんな制度なのか、ということをおさらいした後、どのように変わるのか、ということを書いていこうと思います。

1 そもそも「NISA」って何なの?

それでは最初に、そもそも「NISA」はどんな制度なのか、ということから書いていこうと思います。

「NISA」は、「小額投資非課税制度」の愛称で、「ニーサ」と呼びます。

この制度は、多くの日本人に「投資による資産形成」をしてもらおうと、イギリスの「ISA」という制度をモデルにして作られたもので、日本版ということで「ISA」の前に日本の「N」を付けて、「NISA」と名付けられました。

この「NISA」の何がメリットなのかということなのですが、

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して、約20%の税金がかかりますが、

NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になります。

つまり、税金がかからなくなるというのがメリットです。

現在、NISAには、成年が利用できる①「一般NISA」・②「つみたてNISA」、③未成年が利用できる「ジュニアNISA」の3種類があります。

現在の「NISA」(口座数は2022年9月末現在)

①「一般NISA」(約1,068万口座)

株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。

②「つみたてNISA」(約684万口座)

一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できます。

③「ジュニアNISA」(約93万口座)

株式・投資信託等を年間80万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。

このうち③の「ジュニアNISA」は、2020年度の制度改正において、新規の口座開設が2023年(すなわち今年)までとされ、2024年以降は新規購入ができないこととされました。

以上の説明をまとめたものが、下の【表1】になります。

【表1】2023年までのNISA(出典:金融庁ホームぺージ)

上述のとおり、現在でも多くの方が「NISA」口座を開設しておりますが、

・①「一般NISA」と②「つみたてNISA」の併用ができない

・(特に①「一般NISA」では)非課税期間が短い

・購入できる額が少ない

・制度自体が分かりづらい

などの問題点が指摘されていました。

これらの問題点を解消し、より多くの国民に「NISA」を活用してもらおうということで、「NISA」制度全体の見直しが検討された結果、「令和5年税制改正大綱」で、2024年以降のNISA制度の抜本的拡充・恒久化の方針が示されました。

ここからは、「何が変わるのか」ということを書いていこうと思います。

2 「NISA」の何が変わるの?

それでは、「NISA」がどのように変わるのかを見ていきましょう。

ただし、現時点ではあくまでも「大綱」(すなわち「与党案」)であって、今後の国会での審議次第で変更されたり、可能性は極めて低いと思われますが、廃案になることもあり得ます。

そして法案が成立した後も、施行されるのは来年1月(予定)のため、細かい部分が追加されたり変更されたりすることもあり得ますので、あくまで「現時点での大まかな変更点」としてご理解ください。

① 制度が「恒久化」されます

上述したとおり、現在の制度は、投資ができる期間と非課税期間に、それぞれ「期限」があります。

このため、非課税期間が終了した後に、引き続きそれまでの資産を非課税として続けるか、あるいは、翌年以降に新たに投資をするためにそれまでの残高は課税の口座へ移すなり売却するなりを判断しなければなりませんでした。

ところが、今回の案では、制度が恒久化され、投資可能期間も非課税期間も無期限ということになるため、そういったことを考える必要がなくなり、安心して制度を利用することができるようになると思います。

② 制度が「一体化」されます

現在の制度では、「一般NISA」と「つみたてNISA」は別の仕組みであることから、どちらか一方しか利用することができませんが、今回の案では、この二つが一体化され、一つのNISA口座の中に「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という二つの枠組みができる形となります。

「成長投資枠」というのはこれまでの一般NISAとほぼ似たような形であり、「つみたて投資枠」は従来の「つみたてNISA」とほぼ同じです。商品も「成長投資枠」では株式にも投資できる一方で、「つみたて投資枠」では従来通り、一部の投資信託等に限られる形となります。

これまでとの違いは、この二つの枠のどちらかしか利用できないのではなく、どちらも同時に利用できるようになりますし、「成長投資枠」の分も「つみたてNISA」のような「積立投資」として活用することもできます。

③ 「利用枠」が拡大されます

前述したとおり、現在の制度では「一般NISA」と「つみたてNISA」はどちらか一つしか選べませんが、利用できる枠は、

・「一般NISA」では、年間120万円、利用できる非課税期間は5年なので、総額は120万円×5年=600万円

・「つみたてNISA」では、年間40万円、利用できる期間は20年なので、総額は40万円×20年=800万円

でした。

ところが今回、「成長投資枠」で年間240万円、「つみたて投資枠」は同120万円と大きく増えたうえ、併用できることになることから、合計すると最大で年間360万円まで投資できることになります。

④ 新たに「生涯投資枠」ができます

ところが、制度が恒久化された場合、多くの金融資産を持っている方が毎年360万円を投資できるとなると、生涯で1億円を大きく超える額を非課税で投資できることになります。そうなると、いわゆる「金持ち優遇」の制度になりかねないため、生涯で投資できる額には上限が設けられました。これが「生涯投資枠」と呼ばれるもので、その限度額は、「簿価ベース」(すなわち「買付をした時の額」)で1800万円(このうち「成長投資枠」が1200万円)となりました。

しかし、従来と比べて利用枠が大きく広がったのは、間違いありません。

そして、もう一つの見逃せないポイントとして、「生涯投資枠」の限度内でしたら、売却した分の枠を再び利用できるようになります(ただし、売却した分の枠が復活するのは、売却年の翌年となる見込みです)。

このことについて簡単なイメージ図を作りましたので、【図1】をご覧ください。

【図1】生涯投資枠の利用と復活のイメージ図(あくまでも一例です)

そして、以上のご説明をまとめたものが、【表2】になります。

【表2】現在と新しい「NISA」の比較

3 おわりに

いかがでしたでしょうか。「NISA」の制度が、来年から大きく変わるということが、お分かりいただけたのではないかと思います。

私自身も現在「つみたてNISA」を使って資産運用を行っていますが、新しい「NISA」が、本当に使いやすくなるのではないかと感じるのと同時に、その「自由度」が増した分、より一層「戦略性」も増してくるのではないかとも感じています。

私も、ファイナンシャル・プランナーとして、新しい「NISA」をより一層研究し、お客様一人ひとりに適した活用の仕方などをアドバイスできるようにしていきたく考えております。

また、宣伝となってしまい恐縮ですが、来月2月21日(火)に開催を予定している講座でも、新しい「NISA」の活用方法の一例などをご紹介したく考えておりますので、たくさんのご参加をお待ちしております!

【ご案内】小樽道新文化センターで「「iDeCo」と「NISA」解説講座」を行います

次回は、「令和5年税制改正大綱の2大ポイント」の「第2のポイント」である「相続税や贈与税制度の見直し」について、書こうと思います。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。