自筆証書遺言を書くときに知っておきたいこと

ご覧いただき、ありがとうございます。

今回は「自筆証書遺言」について書こうと思います。

最近は、遺言書を作る方が増えているようです。かく言う私自身も、既に万一の時に備えて遺言書を書き、とある場所に保管をしています。

しかし、この自分で書く遺言(これを「自筆証書遺言」といいます)は、手軽に書くことができる反面、ルールに従わないものは無効になったり、かえって遺族の争いが起こる原因になることもあります。

今回は、「自筆証書遺言」を書くときに最低限知っておきたいことを書こうと思います。

1 そもそも、遺言にはどんな種類があるの?

民法には、「遺言はこの法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない」とあり、民法で認められた方式以外は無効としています(第960条)。

この民法では7種類の方式が認められていますが、このうち圧倒的に多いのは、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類です。

今回ご説明をする「自筆証書遺言」は、遺言を作成する人が、財産目録を除く全文を自筆で書く遺言書です。

【表1】自筆証書遺言と公正証書遺言

2 自筆証書遺言のメリット、デメリットは?

この「自筆証書遺言」。どのような「メリット」や「デメリット」があるのでしょうか。

まず「メリット」は主に、次の3つがあると考えます。

「自筆証書遺言」の主なメリット

①読み書きができる人ならば、証人の必要もなく、ご自身でいつでもどこでも作成できること

②遺言をした事実やその内容も、秘密にすることができること

③方式があまり難しいことがなく、費用もかからないこと

逆に「デメリット」も当然あって、主なものは次の4つがあると考えます。

「自筆証書遺言」の主なデメリット

①方式が不備で無効になったり、内容が不完全だと遺族の中で争いが起きたりする可能性があること

②詐欺や脅迫により作成される可能性があること(このような遺言は無効となります)

③紛失・偽造・変造・隠匿などの危険があること

④遺言の執行に当たっては、家庭裁判所の検認手続き(※)が必要となること

※ 相続人に対して遺言の存在やその内容を知らせるとともに、遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

ただし、③と④のデメリットを解消すべく、2020(令和2)年7月から法務局において「自筆証書遺言の保管制度」が始まりました。

この制度を活用することで、自筆証書遺言のデメリットは軽減されたと考えています。

この制度については、詳しくは法務省のホームページをご覧いただきたく思いますが、このコラムでも、また回を改めてご説明します。

3 自筆証書遺言を書くときに、注意すべきことは?

上述しましたとおり、遺言は民法で認められた方式以外の方法では無効とされており、自筆証書遺言の場合にも、その方式が細かく定められています。

その中でも特に注意すべきことを、ここでは3つ書きます。

「自筆証書遺言」を書くときの、主な注意点

①自筆証書遺言は、遺言者本人が遺言の全文・日付(年月日)・氏名を書き、押印しなければなりません。印鑑は認印でも大丈夫です。住所は書く必要はありません。また、「吉日」など、遺言をした日付が特定できないものは無効となります。氏名に代えてペンネームなどを書いた場合でも、本人が特定できれば有効です。

②本文は自筆でなければなりませんが、財産目録については、パソコンの作成や代筆、銀行通帳のコピー、不動産の登記事項証明書などを目録として添付することができます。ただし、財産目録の各ページに署名と押印が必要です。

③内容を訂正する場合は、訂正をする箇所を二重線で抹消し、その上から訂正印を押します。また、余白に変更内容を付記して署名をします。これは財産目録を訂正する場合も同じです。

そのほかにも細かく定められていますので、実際に自筆証書遺言をお書きになる際は、法務省のホームページをご参考いただきたければと思います。

4 「思い」を遺言でしっかり伝えるために

このように「自筆証書遺言」には、民法で定められたルールがあり、これに従わない場合は、遺言が無効になることもあります。そうなると、せっかく遺言に込めた思いが伝わらなかった、ということにもなりかねません。

また、私がもう一つ大きな問題として考えるのは、遺言の内容が不完全(あいまい)で様々な解釈が生じ、かえって遺族の間で揉めることになってしまうことです。このような例も非常に多いので、遺言で特定の財産を与えるときは、その財産と与える人が誰の目から見ても分かるよう、明確に書くようにしましょう。

また、「うまく遺言を書く自信がないな…」と感じた方は、専門家である司法書士や行政書士に依頼をするか、公正証書遺言を作成するのがよいと思います。

今回も本コラムをご覧いただき、ありがとうございました。 次回は「個人向け国債」について書こうと思います。お楽しみに!