「ふるさと納税」のキホン(後編)

今回もご覧いただき、ありがとうございます。

前回に引き続き、12月7日(水)に「札幌消費者協会「くらしと金融問題研究会」」で行った講演の一部内容をご紹介する形で、「ふるさと納税」について書こうと思います。

前回は「ふるさと納税」の特徴や仕組みなどを書きましたが、今回は「ふるさと納税」による節税策の仕組みのほか、私なりの「ご提案」についても、書きたいと思います。

1 ふるさと納税を使った「節税策」の仕組み

「ふるさと納税」の魅力は、何といっても、

「ふるさと納税の魅力」

寄付した金額から2,000円を差し引いた額の税金が控除される(要するに、「戻ってくる」)

ということでした。

ただし(当たり前ですが)、戻ってくる税金の額には上限があります。そしてその額は、収入額や世帯構成などによって、一人ひとり異なります。

したがって、「ふるさと納税」で節税をしようとするのでしたら、「税金が戻ってくる上限額」を知らなければなりません。

それを知るための主な方法として、次の3つがあるのではないかと思います。

「税金が戻ってくる上限額」を知るための「3つの方法」

① ご自身で計算をする

② ポータルサイトなどの「シミュレーター」を使う

③ 自治体の税務担当課や、税理士などに聞いてみる

 

このうち、②の「シミュレーター」については、私も様々なサイトのシミュレーターを試しましたが、算出額の精度がやや低かったり、精度が高い場合には逆に正確な入力が難しい、といった印象を受けました(税の制度自体がもともと複雑なものですので、これは仕方がないのではないかと思います)。

このため「シミュレーター」は、あくまでも「おおよその目安を知る」目的で使いましょう。

また、③の「自治体の税務担当課や税理士に聞く」ですが、最近は、自治体にもこのような問い合わせが多くあるようなので、スムーズにお答えをいただける自治体も多いと聞きますが、対応がまちまちなところもあるかもしれません。また、税理士に相談をする場合には、当然ながら有料となるのではないかと思います。

このため、できれば①の「ご自身で計算する」が望ましいのですが、当然ながら「ふるさと納税」の寄付金控除のしくみはもちろん、所得税や住民税の知識が必要になります。

というわけで、現実的な方法としては、②のポータルサイトなどの「シミュレーター」を使って目安とするか、③の「自治体の税務担当課」に聞く、ということになるのかな、と思います。

ただし、たとえば今年行う「ふるさと納税」の税金が戻る上限額は、(前年ではなく)今年の所得税や住民税の「課税給与所得」を基にして計算することなりますので、収入額や世帯構成などが前年と大きく変わった方は注意しましょう(12月の下旬に、多くの方が「ふるさと納税」をされるのは、このためです)。

ちなみに「ふるさと納税」によって控除される税金額について図で表すと、【図1】のようになります。

【図1】「ふるさと納税」によって控除される税金について

このうち、①の「所得税の控除」と②の「住民税の控除」は、元々「寄付金控除」としてあったものですが、③の「ふるさと納税の特例」が、「ふるさと納税」制度の創設によって、新たに加わった部分となります。

そして、「①~③の控除額を合計した額」が、「寄付額から2,000円を引いた額」よりも大きければ、自己負担額2,000円で「ふるさと納税」の「お礼の品」をもらえる、ということになるわけですね。

また、住宅ローン控除を受けている方が「ふるさと納税」をして大丈夫か?という質問をよくお受けしますが、「住宅ローン控除」と「ふるさと納税」を併用して行うことはできます。ただし、住宅ローン控除が適用された段階で、納税額が寄付金控除額を下回った場合には全額を控除できない場合もありますので、その点は注意が必要です。

2 私からの「ご提案」

さて、当事務所ホームページ内「プロフィール」のとおり、私は、5年ほど前まで小樽市役所で働いていた、元自治体職員です。

その立場から、「ふるさと納税」を行う皆さんに、ぜひともご提案をさせていただきたいことがあります。

それは…

ということです。

多くの自治体(北海道内ですと、「泊村」以外)では、「ふるさと納税」によって減収となった住民税のうち75%は、国からの地方交付税によって補てんされる仕組みにはなっています。

とはいっても、あなたが「ふるさと納税」をすることで、あなたが住む自治体の税収が減ることになるわけです。その結果として、あなたの街の「住民サービス」が低下することになります。

「じゃあ、どうすればよいのか?」ということですが、前回のコラムでお話しした「現在までの流れ」を考えますと、「ふるさと納税」をやめましょう!ということには、なかなかならないのではないかと思っています。

ということでしたら、他の自治体に「ふるさと納税」をするのでしたら、あなたが住む自治体への「ふるさと納税」も勧めましょう!というのが、元自治体職員である私からの、現実的な「ご提案」です。そしてそのことが、あなたの街の「住民サービスの向上」につながるのではないかと思います!。

3 おわりに

というわけで、前回と今回の2回にわたって、「ふるさと納税」について書いてみました。

「まとめ」としましては、FPとしての立場からは、この制度は「有効な節税策」であることには間違いありませんので、活用できる方は活用した方がよい、となりますが、元自治体職員としての立場からは、ぜひご自身が住む自治体への「ふるさと納税」を勧めていただきたい、そう考えています。

来週12月30日(金)はお休みとさせていただき、今回が年内最後のコラムとさせていただこうと思います。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。来年も引き続き、本コラムをよろしくお願いいたします。