暦年贈与をする際に注意したいこと

ご覧いただき、ありがとうございます。

今月は「贈与で失敗しないための基礎知識」というテーマでコラムを書いていますが、今回は「暦年贈与をする際に注意したいこと」というテーマで書きたいと思います。

1 どのような贈与に課税されるのか

贈与については、どういう場合に課税されるのか(逆に課税されないのか)、分からない方も多いのではないかと思います。

そのため、最初にそのことからご説明をしたいと思います。

贈与税についても、公益性や社会政策的見地、あるいは国民感情の面から、贈与税の課税対象から除外することが相当と認められるものがあります(これは相続税も同様です)。

具体的な例として、以下のような財産が当てはまります(主な例であり、以下の場合場合にも該当するものがあります)。

① 扶養義務者間の通常必要とする生活費または教育費

② 社交上の香典や贈答品などで社会通念上相当と認められるもの

③ 障害者が特定障害者扶養信託契約に基づいて受ける信託受益権

④ 直系尊属からの住宅取得等資金の贈与のうち非課税の対象となった部分

⑤ 直系尊属からの教育資金の贈与のうち非課税の対象となった部分

⑥ 直系尊属からの結婚・子育て資金の贈与のうち非課税の対象となった部分

⑦ 配偶者から贈与された居住用財産で2,000万円以下の部分(贈与税の配偶者控除の適用を受けた部分に限る)

したがって、扶養義務者間で元々必要とする生活費や教育費を援助すること自体は、元々贈与税が発生しません。ただ、その額を超えて贈与し、④~⑦のような特例にも該当しないような部分は、贈与税の課税対象になります。

2 贈与の「正しい手続き」について

暦年贈与に限りませんが、贈与をする際は、預金通帳や証書の名義を変えるだけでなく、贈与を受けた人が贈与を受けたものを自由に出し入れできるように、通帳(口座を開設した支店の所在地にも留意する必要があります)、証書、印鑑などを受けた人が自分で保管しておくことが大事です。

贈与をする際は契約書を作らなければならないわけではありませんが、契約書を作ることで無用なトラブルを防止できます。また現金を贈与する場合は、現金を直接手渡しするのではなく、必ず銀行振込で行い、証拠を残すようにしましょう。

3 受贈者の意思能力について

贈与は契約ですので、受贈者(贈与を受ける人)の意思表示が必要です。

このため、例えば受贈者が幼児の場合には、「贈与を受ける」という意思表示ができるかが、一つの問題となります。

一般的に中学生以上であれば問題ないといわれていますが、例えば受贈者が未成年のときは、贈与者から贈与を受けた預金通帳や証書は印鑑と一緒に両親(親権者)が代わって受け取り、その子供が成年になるまで保管・管理しておくことが大切です。

また、ここ最近は、認知症を患っている方の贈与契約の真偽が問われて、トラブルになることが増えてきています。認知症患者が贈与契約を結ぶ場合には、症状にもよりますが、意思能力があることの証明(例えば、自筆のサインのある贈与契約書や医師の診断書など)を整えておき、後々のトラブルにならないようにすることが大切です。

4 贈与に関する制度の改正について

前回のコラムでも書きましたが、現在、政府内では贈与税全体の見直しが課題として浮上しています。

そのため、現在の暦年課税制度が早ければ来年にも改正される可能性があることは、留意しておきましょう。

前回のコラムを書いた後も調べましたが、現在のところ、変更内容として一番可能性が高いのは、「持ち戻し期間」(贈与で得た財産を相続財産に加算する期間)を、現在の相続開始前3年間から延長する案が最有力のようです(例えば、ドイツやフランスのように10年間や15年間にするとか、5年間ないし7年間にするとか)。

なので、前回も書いたように、暦年課税制度がいきなり廃止されるような可能性は小さいのではないかと(あくまで個人的には)考えていますが、中長期的には、暦年課税から相続時精算課税に移行をさせていくような制度改正が行われていくのではないかと考えています。

5 おわりに

今回は、「暦年贈与をする際に注意したいこと」というテーマで書きました。

贈与は、注意すべきポイントを押さえて行えば何も問題はありませんし、自分の資産を有効に次世代に引き継ぐことができますが、誤った方法で行うと逆に次世代が困ってしまうことにもなりかねません。

どうしても分からないことがあったらご自身で解決しようとせず、一般的な事項ならばファイナンシャル・プランナーや税理士に、個別具体的な事項ならば税理士(税理士法で定める税理士の独占業務となる)に相談をしながら行うのが良いと思います。

今回もご覧いただきありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。