年金を増やす「2つの正攻法」
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
今回も、6月5日に「FMおたる」で放送した「FP辰田のサン・サン・トーク!」とのコラボ企画として掲載をいたしますが、当初の予定日から掲載が大幅に遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。
その放送では、「公的老齢年金の仕組み ~今月から、年金額が変わります!~」というテーマで、FMおたるアナウンサーの田口智子さんとお送りしました。
まだお聞きになられていない方は、よろしければこちらからお聞きください。
第2回となる今回は、放送の後半でお話ししました、「将来の老齢年金を増やす方法」について書こうと思います。
放送でお話しできなかったことも触れようと思いますので、これから年金を受給される方には、ぜひ参考にしていただきたく思います。
1 そもそも、年金を増やすための「裏技」ってあるの?
私も仕事上、よく年金に関する雑誌やネットの記事などを見たりしますが、一部の記事には、「年金を増やす裏ワザ!」といった見出しが躍っています。
しかし、放送でもお話ししましたが、私は年金を増やす方法に「裏ワザ」はなく、「正攻法」しかないと考えています。
(もっとも、記事を読んでもらうには読者を引きつける「見出し」を付けなければならないのでしょうから、「裏ワザ!」と書きたくなる気持ちは分かるのですが…。)
そして、その「正攻法」は、大きく2つあります。それは放送でもお話しをしましたが、
年金を増やす「2つの正攻法」
① 厚生年金のある事業所で、長く働くこと
② できるだけ年金の受給開始を遅らせること
この2つです。
それぞれ、くわしく書いていこうと思います。
2 厚生年金に加入して働く「メリット」は?
最初に、①の「厚生年金のある事業所で、長く働くこと」です。
とはいっても、「厚生年金に加入すると、厚生年金保険料を(それも、健康保険料も含めて)払わないとならない…。」と考える方も多いのではないでしょうか。
確かに、ご主人の健康保険の扶養に入っている第3号被保険者の奥様などは、まるまる保険料負担が増えることになりますので、そのような思いも理解できます。
しかし、その奥様が受け取れる年金額を増やすということでは、メリットがあるのも事実です。
ちなみに、実際に厚生年金がいくら増えるかといいますと、これは超ざっくりですが、便利な計算式があります。
老齢厚生年金(概算)を計算する「便利な計算式」
(増額される)厚生年金額(年額)= 年収(単位:100万円) × 5,500円 × 加入年数
たとえば、65歳から70歳までの5年間、厚生年金加入事業所で働き、その月収が10万円(年収120万円)だったときは、
増額される厚生年金額(年額)=(120万円÷100万円)×5,500円×5年間=33,000円
というわけで、年額33,000円(月額2,750円)、厚生年金が増えることになります。
「大したことない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この額をもらい続けることができることはメリットといえます。
※ ただし配偶者が亡くなった後は、配偶者の遺族年金との兼ね合いが生じます。詳しい説明は省きますが、
「本人の老齢厚生年金<<配偶者の遺族厚生年金」のときは、以後の支給額は「配偶者の遺族厚生年金額」となる可能性が高いです。
そして、特にお勧めをしたい方がいます。それは、「国民年金に未納期間がある方」です。
というのも、60歳以後も厚生年金に加入すると、「経過的加算」という制度によって、厚生年金の制度で国民年金の満額に対する不足分をカバーできることがあるのです。
※本来の「経過的加算」の目的は異なるのですが、結果的に国民年金の不足分をカバーする制度となっています。
また、ご自身に万一のことがあったときは、障害厚生年金や遺族厚生年金が支給される場合がありますし、併せて健康保険に加入しますので、万一傷病で休職を余儀なくされた場合は「傷病手当金」を受給できます(「傷病手当金」の詳しい説明は省きますが、ざっくりと書くと、給料の3分の2の額が、休職日数の合計で最大1年6か月分支給されます)。
このあたりの詳しいことは、いつでもお気軽に問い合わせいただければと思います。
3 意外と誤解の多い「年金の繰下げ」
もう一つは、②の「できるだけ年金の受給開始を遅らせること」です。
法律で定められている老齢年金の支給開始年齢は65歳ですが、この支給開始年齢を遅らせることで(これを「繰下げ」といいます)、年金額が1か月につき0.7%ずつ増えます。
※ 66歳に達するまでに年金の受給を開始したときは、年金の繰下げの対象となりません。
ただ、放送でもお話しをしましたが、年金の支給開始年齢を繰り下げるということは、それまでの期間を、その年金収入なしで生活しないとなりません。
このため、それが難しい場合には「お勧めできない」方法となります。
なので、私がお客様からご相談を受けた場合も、将来の家計収支を分析しながら、慎重にご提案をするようにしています。
また、昨年4月からは、繰下げが75歳までできるようになりました(それまでは70歳でした)。
このことにより、75歳まで繰り下げた場合には年金額が84%(=0.7%/月×12か月×10年(65~75歳))も増額されることになります。
たとえば、65歳から受給する場合の支給年金額が月額15万円だった方が75歳まで繰り下げると、月額27万6千円に増額されるということです。その方の生活水準(支出額)にもよりますが、これだけもらえますと、多くの方は一生安心できるでしょう。
ただし繰り返しになりますが、繰り下げている間は年金が払われませんし、受給開始後も、年金額が増額されることで税金(所得税や住民税)が増えるほか、医療や介護の保険料が増えたり、費用負担割合も変わることがあります。また、自治体のサービスが年収要件に引っ掛かって受けられなくなってしまうこともあり得ます。
このため「75歳までの繰下げ」は、お客様にオプションの一つとしてお話しをすることはありますが、実際にお勧めすることはほとんどないです。
ところで、この「繰下げ」制度ですが、いくつか誤解をされている方が多くいらっしゃいます。
ここで、その一例をあげてみようと思います。
年金の繰下げに関する、よくある「誤解」
【その1】65歳になった時に、何歳まで繰り下げるかを決めないとならないのでは?
→ あらかじめ年金を何歳でもらうか決めなければいけないということはありません。65歳の時点で余裕があれば、とりあえず繰下げ待機状態にしておいて、必要になったら申請をすればOKです。
【その2】繰下げをしている間に、リフォームや病気などで急にたくさんのお金が必要になったら、どうしよう?
→繰下げ待機後の受給方法は2種類あります。一つは、繰下げによって増額された金額を受給開始後に毎年受け取る方法(よく知られている方法)ですが、もう一つの方法として、本来65歳以降もらうはずだった年金を遡って一括で受給し、その後も増額なしの年金をもらい続けることもできます。この場合は結局、繰下げをしなかったのと同じになりますが、急にたくさんのお金が必要になったときでも、このような方法で対応することができます。
【その3】繰下げをしている間に、死んでしまったら損するんじゃないの?
→ 繰下げをしている間に亡くなっても、65歳以降もらえたはずの年金を増額なしで遺族が受け取ることができます。【その2】の「もう一つの方法」と同じ理屈です。(ただし70歳超で亡くなった場合など、一部例外があります。)
なお、繰下げ受給を開始してから早い時期に亡くなったときは確かに損をしますが、これは受給方法に関係なく起こり得ることですので、これは割り切るしかないかと思います。
【その4】繰下げをするときは、国民年金と厚生年金を一緒に繰り下げないとならない?
→ 国民年金と厚生年金を両方一緒に繰り下げる必要はありません。どちらか一方だけを繰り下げるのもOKです。私自身、お客様によってはそのようなご提案を行うこともあります。(ちなみに「繰上げ」の場合は、両方一緒に繰り上げなければなりません。)
いかがでしたでしょうか。「年金の繰下げ」をされる方はまだまだ少ないようですが、放送でもお話ししたとおり、公的老齢年金は、一生涯もらい続けられることができる老後の貴重な収入源ですし、年金額を増やすことによって「長生きリスク」に備えることができます。
ぜひとも今回ご紹介をした「2つの正攻法」をご参考にしていただきたく思いますし、老後の生活にご不安をお持ちの方や、今回の話にご興味おありの方は、いつでもお気軽にご相談ください!
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
明日30日(金)も、「国民年金の保険料を払わないと、どうなるの?」というテーマでコラムを掲載いたします。
放送でも少し触れましたが、私は、国民年金の保険料を未納にし続けている方を、老婆心ながらとても心配しています。
なぜそのように思うのか、そして「それでは、どうすればよいのか」といった対応策などを書こうと思います。
よろしければ、ぜひご覧ください!