「親から子への住宅資金贈与」で知っておきたいこと

ご覧いただき、ありがとうございます。

8月から引き続き、「贈与で失敗しないための基礎知識」というテーマでコラムを書いていますが、今回は「親から子に住宅資金を贈与する際に知っておきたいこと」というテーマで書きたいと思います。

親から子に住宅資金を贈与することは、よくあるのではないかと思います。

私も普段、相談業務をしている中で、実際に贈与を受けた方(あるいは、受ける予定の方)もいらっしゃいます。

このようなケースでも「贈与税が非課税になる特例」がありますが、前回の「贈与税の配偶者控除」と同様に、様々な適用条件がありますので確認しておきましょう!

※ 読者に対する分かりやすさを意識して、可能な限り簡素な言葉を用いて書いておりますので、若干厳密さに欠ける表現もあるかと思いますが、ご了承願います。

1 特例のメリットとは?

さて、この特例は、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合」に適用されます。

そのため、本コラムは「親から子への贈与」というテーマで書いておりますが、直系血族でしたら、「祖父母」や「孫」の場合も適用できます。

贈与により取得した住宅取得等資金について、取得する住宅用家屋の区分に応じて、受贈者(贈与を受ける人)1人につき、次の金額まで非課税となります。

非課税限度額(2023年12月31日までの贈与について)

・省エネ等住宅       1,000万円

・省エネ等住宅以外の住宅   500万円

省エネ等住宅かどうかの判断は、なかなか一般の人には難しいと思います(正直、私も自信がありません…)ので、ハウスメーカーや不動産会社などに直接確認をするのがよいと思います(その際、完成物件の場合には「住宅性能証明書」などの書類を確認するとよいと思います)。

また、本特例は、既にお話しした「暦年課税」や「相続時精算課税」とも併用できます(ちなみに、「暦年課税」と「相続時精算課税」の併用はできません)。

このため、本特例適用後の残額からさらに、以下の額を贈与税非課税にすることができます(他に該当する贈与がない場合)。

・暦年課税により贈与を受ける場合には、基礎控除額110万円

・新たに相続時精算課税を選択する場合には、特別控除額2,500万円

また、贈与者が贈与後に亡くなり、その相続税の課税価額を計算する際には死亡前3年間の贈与を加算しますが(これを「生前贈与加算」といいます)、本特例の適用を受けた非課税限度額以下の金額については、その必要がありません。

例えば、贈与者である父が子に本特例を適用して500万円を贈与した後、父が2か月後に亡くなったとしても、この500万円は相続税の課税価額に加算する必要はないということになります。

2 特例を受けるための要件は?

本特例には、「受贈者(贈与を受ける人)」や「対象となる家屋」に、いくつかの要件がありますので、注意が必要です。

1 受贈者の要件

(1) 贈与を受けたときに贈与者の直系卑属であること

ここで注意すべきは、受贈者の配偶者の父母(または祖父母)は直系尊属に該当しないということです(ただし、養子縁組をしている場合は該当します)。

なので、例えば配偶者のご両親から住宅資金の贈与を受けるような場合、養子縁組をしない限りは配偶者が贈与を受けない限り、本特例を適用できません。

(2) 贈与を受けた年の1月1日において18歳(2022年3月31日以前の贈与の場合は20歳)以上であって、贈与を受けた年分の合計所得金額が2,000万円以下であること

年齢要件については、1月1日現在の年齢であることに注意が必要です。また、収入要件は、「年収」ではなく、「所得」による基準となります。

(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること

(4) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その家屋に居住すること、また同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実と見込まれること

このような条件もありますので、例えばこれから住宅を探し始めるような場合には、先に贈与を受けてしまうと適用できない可能性があるので、注意が必要です。

(5) 受贈者の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある者から住宅用の家屋を取得したものではないこと、またはこれらの者との請負契約等により新築もしくは増改築等をしたものではないこと。

親族などから住宅を購入した場合のほか、親族などと請負契約を締結して新築や増改築をしてもらったような場合には適用できませんので注意が必要です。

(6) 2014年以前の年分について、旧非課税制度の適用を受けたことがないこと。

2 対象となる家屋の要件

対象となる家屋の要件

(1) 日本国内にあること。

(2) 中古住宅を取得する場合は新耐震基準に適合していること(登記簿上の建築日付が1982年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合していると見なされます)。

(3) 新築または取得した住宅用の家屋の登記簿上の面積(マンションなどの場合には内法方式によるその専有部分の床面積)が50㎡以上240㎡以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること

(4) 取得した物件の場合、建築後使用されたことがないか、使用されたことがある場合には「耐震基準適合証明書」や「建築住宅性能評価書」の写しなどにより耐震基準に適合すると証明されたものであること

この中では、家屋の面積に上限と下限があること、店舗兼住宅などは、その割合に注意すべきこと、中古住宅の場合は新耐震基準に適合していることが、特に注意すべき点になるかと思われます。

3 おわりに

今回は「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」について書きました。

本特例も多くの方が利用をされています。前回書いた「贈与税の配偶者控除」と同じく、様々な適用要件があることには注意が必要ですが、「贈与税の配偶者控除」と異なり、デメリットは基本的にありませんので、要件を満たす場合は積極的に特例を利用すべきではないかと思います。

なお、前回までにも書きましたが、いざ適用を受けようとする際に分からないことがありましたら、ご自身で解決しようとせず、一般的な事項ならばファイナンシャル・プランナーや税理士に、個別具体的な事項ならば税理士(税理士法で定める税理士の独占業務となる)に相談をしながら行うのが良いと思います。

8月から書いている「贈与で失敗しないための基礎知識」ですが、来週は「祖父母や親からの教育資金の一括贈与」について書き、最終回としたいと思います。

他のテーマをご期待されている方、本当に申し訳ありませんがもう少々お待ちください。

今回もご覧いただきありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。