国民年金保険料を払わないと、どうなるの?

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

本日も昨日に引き続き、6月5日に「FMおたる」で放送した「FP辰田のサン・サン・トーク!」とのコラボ企画として、コラムを掲載します。

諸般の事情により掲載が大幅に遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。

5日の放送では、「公的老齢年金の仕組み ~今月から、年金額が変わります!~」というテーマで、FMおたるアナウンサーの田口智子さんとお送りしました。

まだお聞きになられていない方は、よろしければこちらからお聞きください。

第3回となる今回は、放送の後半で少しだけお話ししました、「国民年金保険料を納めないと、どうなるの?」ということについて書こうと思います。

折しも今週26日に、厚生労働省が令和4年度の国民年金保険料の納付状況を発表しました。これによると同年度分の保険料納付率は前年度から2.2%増の76.1%となり、11年連続で上昇しているとのことです。

ちなみにこの「納付率」は、「納付月数」を「納付対象月数」で割ったものですが、この「納付対象月数」には免除や猶予の月数は除かれています。したがって、ざっくりですが、本来納付すべき国民年金保険料のうち4分の1弱は未納になっているということになります。

そして、やはりと言いますか、20代後半~30代前半の若い方の納付率が特に低くなっています。

放送でもお話ししましたが、私は老婆心ながら、国民年金保険料を未納にし続けている方、そしてそのご家族などをとても心配しています。

本日は、国民年金の保険料を未納にし続けるとどのようなデメリットがあるのか、また、それではどうすればよいかといった対応策などを書いていこうと思います。

1 国民年金保険料を未納にすると…

最初に、国民年金保険料を未納にすると、具体的にどうなる可能性があるのかを書こうと思います。

国民年金保険料を未納にすると…

① 年金保険料の未納が続くと財産を差し押さえられることもある

② 将来受け取る年金の額が減る

③ 遺族年金や障害年金が受け取れなくなる場合もある

このうち①と②は、厳しい書き方かもしれませんが「自己責任」の範ちゅうですので、本人がご納得されているのであれば、それで良いのかもしれません(もちろん、個人的にはそうは思っていませんが…)。

ただ③については、万が一障害年金や遺族年金を受け取れなくなった場合、その影響をうけるのはご本人ではありません。

本人のご遺族であったり、介護をし続けるご家族などにも大きな影響を与えることになります。

万一の事故などは突然襲ってくるものです。その際に、貴重な遺族年金や障害年金を得られなくなると、ご遺族やご家族の生活に大きな影響を与えてしまうでしょう。

それでは、ここからは一つひとつ触れていこうと思います。

2 もう少し、くわしくお話しします

最初に①の「財産の差し押さえ」ですが、これは一般的に以下の流れによるようです。

「財産の差し押さえ」の一般的な流れ

① 年金の未納が続いた場合、まず封書やはがきで保険料支払いの案内が届きます(納付督励)

② 次に、「催告状」という支払いを促す封書が届きます。

③ さらに無視しているといずれ最終催告状が届き、期日までに支払わない場合は延滞金が発生することがあります。

④ さらに未納が続くと督促状が届き、年金機構の職員が未納者の銀行口座や有価証券、自動車などの財産を調査した上で、それらを差し押さえることがあります。

⑤ それでも未納が続くと、国が強制的に保険料を徴収することができるようになります。

実際にどれほどの差し押さえが行われているかは何とも言えませんが、このような流れで財産を差し押さえられる可能性があるということです。

次に②の「将来受け取る年金の額が減る」です。

国民年金の場合、現在の法制度では原則として20歳から60歳までの40年間加入することになっていますが、その全期間保険料を納付し続けた場合、満額の老齢基礎年金として、65歳から年額795,000円(月額66,250円)が支給されます(新規裁定者の場合)。

そして、保険料を未納にすると、その期間分の額が減らされます。40年加入して795,000円ですので、1年未納にすると約20,000円が減額されます。

なお、同じようでも「免除」の場合には、国庫負担分は支給されます。現在の国庫負担分の割合は2分の1ですので、たとえば1年間全額免除だった場合、約10,000円の年金は支給されます。

また、公的老齢年金は、そもそも加入期間が10年以上ないと支給されません。この「加入期間」は、「納付期間」のほか「免除期間」も含みます(他に特例で含めることができる期間もありますが、ここでは省略します)。

このように、国民年金保険料の支払いを未納にし続けると、ご自身の年金額が単に減額されるだけでなく、加入期間不足で年金を一切もらえない、といったこともあり得るということです。

最後に③の「遺族年金や障害年金が受け取れなくなる場合もある」です。

国民年金の遺族年金(これを「遺族基礎年金」といいます)は、お子様の養育のために支給される年金です。このため、原則として高校生までのお子様を持つ配偶者またはお子様ご自身に対して支給されます。

※ちなみに「遺族厚生年金」は、遺族の生活維持のため支給される年金です。このように、遺族基礎年金と遺族厚生年金は、支給目的や対象となる遺族が異なります。

戻って「遺族基礎年金」の額ですが、

たとえば「子のある配偶者」が受け取る場合、その額は、

年額795,000円+子の加算額

※ 子の加算額…2人目までは各228,700円、3人目以降は各76,200円

となります。

たとえば、お子様が2人の場合ですと、

795,000円+228,700円×2人=1,252,400円となり、月10万円強の額が支給されます。

そして問題となる「遺族基礎年金の支給条件」ですが、たとえば国民年金の被保険者である間になくなった場合では、次の2つの条件のどちらかを満たさねばなりません。

遺族基礎年金の支給条件(国民年金の被保険者である間に死亡した場合)

①死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること。

②死亡した者が65歳未満の場合、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと(死亡日が令和8年3月31日までの特例)。

実際問題として、長期間未納を続けていた方が①を満たすことはなかなか難しいです。このため、まずは②を満たせるようにしていただきたく思います。

なお字幅の関係上、障害年金の詳細については略しますが、受給要件などの基本的な考え方はほぼ同じです。 くわしくは、以下の日本年金機構のホームページをご参照ください。

3 まずは「免除」や「猶予」申請を!

いかがでしょうか。

このように、国民年金保険料を未納にすることは非常に大きなリスクがあることをお分かりいただけたかと思います。

しかし、未納の理由として最も多いのは、「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」というものです。

特に自営業者や無職の方は、収入が不安定になりやすく、支払いが難しくなり滞納が続いてしまうこともあるかと思います。私自身も現在は自営業者ですので、このことは理解できます。

そのような場合には、保険料をそのまま未納の状態にするのではなく、必ず「免除」や「猶予」の申請を行うようにしましょう。

これらの申請を行うことで、少なくとも遺族年金や障害年金が支給されないといったリスクを防止することができます。

それでは実際に、どのような免除制度や支払猶予制度があるのでしょうか。

主な国民年金保険料の免除制度や支払猶予制度

①保険料免除制度

→本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下である場合、または失業した場合に申請できるものです。本人が申請書を提出し承認された場合、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類から免除内容が選定され、保険料が免除されます。

②保険料納付猶予制度

20歳から50歳未満で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合に申請できます。本人が申請書を提出し承認された場合、保険料の支払いが猶予されます。

③学生納付特例制度

卒業までに1年以上かかる学校に在学している学生に限り、本人が申請を行うことで在学中の保険料の支払いが猶予される制度です。学生納付特例制度の対象者には、大学や大学院、高等学校の他、夜間・定時制課程や通信課程も含まれるため、多くの学生が対象となります。

④産前産後期間の免除制度

出産前後の一定期間、国民年金保険料が免除される制度です。自営業者などの第1号被保険者が出産した場合、出産予定日又は出産日が属する月の前月から4カ月間の国民年金保険料が免除されます(妊娠85日以上で死産、流産、早産された方も含む)。

また、双子など多胎妊娠の場合は、出産予定日又は出産日が属する月の3カ月前から6カ月間の保険料が免除されます。

他の免除制度と異なり、産前産後の免除期間は保険料を納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。出産予定日の6ヵ月前から、(小樽市の場合)市役所14番窓口で申請できます。

なお、これらの申請の対象者となる条件など、くわしくは日本年金機構のホームページをご覧ください。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

来月の「サン・サン・トーク!」は7月5日(水)の午前11時から、テーマは「あなたは大丈夫?不動産の相続登記が義務化されます!」です。

放送内容など、くわしくはこちらをご覧ください。

そして来月もコラボ企画として、7月7日(金)と14日(金)にコラムを掲載しようと思います。内容は決まり次第、お知らせします。

それでは、来月の生放送、そしてコラムもお楽しみに!