「相続した土地を国が引き取る制度」とは?
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
今回も先週に続き、7月5日に「FMおたる」で放送した「FP辰田のサン・サン・トーク!」とのコラボ企画としてコラムを掲載しようと思います!
5日の放送では、「あなたは大丈夫?不動産の相続登記が義務化されます!」というテーマで、FMおたるアナウンサーの田口智子さんとお送りしました。
まだお聞きになられていない方は、よろしければこちらからお聞きください。
第2回となる今回は、放送の後半でお話しした「相続した土地を国が引き取る制度」について、改めて本コラムで書こうと思います。
放送時間の都合上、放送でお話しできなかったことも色々触れようと思いますので、ぜひご参考にしていただきたく思います。
1 すでに「スタート」しています!
放送内、そして先週のコラムでも触れましたが、日本では「所有者不明の土地」が増え続けており、既に九州の面積を上回ったといわれています。
このことを問題視した国は、「所有者不明の土地」の発生防止と利用の円滑化を図るため、一昨年に民法や不動産登記法を改正したほか、一連の法律を成立させることで、対策を進めています。
今回の「相続した土地を国が引き取る制度」は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律土地国庫帰属法」(通称「相続土地国庫帰属法」という法律で定めており、この法律が今年4月27日に施行されました。
放送でもお話ししましたが、この制度自体は「国民の要らない土地を国が引き取る」という、ある意味画期的な制度といえます。
この制度に対する関心自体は高いようで、法務局には多くの相談が寄せられているようです。 この後は、本制度の概要のほか、どのような利点・欠点があるのか、書いていこうと思います。
2 国に引き取ってもらえるのは、どんな土地?
最初に、本制度で「国に引き取ってもらえる土地」はどのような土地なのか、ご説明します。
国は、「引き取ることができる土地」を以下のとおり示しています。
国に引き取ってもらえる「土地の10条件」
① 建物がないこと
② 抵当権や賃借権などが設定されていないこと
③ 通路や墓地などを含まないこと
④ 有害物質で汚染されていないこと
⑤ 土地の境界が明らかになっていること
⑥ 勾配30度、高さ5メートル以上の崖がないこと
⑦ 管理を阻害する車や樹木などがないこと
⑧ 産業廃棄物などが地下にないこと
⑨ 隣接地の所有者などと争いがないこと
⑩ 防災措置の必要性や金銭債務の承継など、過分の管理コストがかからないこと
※このうち①から⑤は申請の段階で直ちに却下となる条件、⑥から⑩は審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる条件となります。
いかがでしょうか。これらの条件をすべて満たす土地は、実際はそう多くないかもしれません。
また、(山林や原野ならともかく、)宅地でしたら「(国に引き取ってもらわなくても)売ることもできるのでは?」とも考えてしまいます。
次に、「申請から決定までに要する期間」についてです。
国では、決定までの流れを以下のとおり示しています。
国庫帰属までの流れ(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内」冊子)
そして、期間については「半年から1年程度」かかるようです(制度がスタートして、まだ間もないということもあるのかもしれませんが)。
最後に、一番気になる「費用」についてです。
まず、申請時の手数料として「土地1筆当たり14,000円」がかかります。これは申請時にかかる費用ですから、仮に申請後に却下された場合でもかかることになります。
そして、承認が決定した場合には「負担金」を支払うことになりますが、これは「承認した土地の管理に要する10年分の標準的な費用の額」を考慮して決められています。
これは土地の4類型(宅地、田畑、森林、その他)ごとに計算方法が定められており、おおむね「一律20万円」の範囲内で収まるケースが多いのですが、森林や市街地の宅地などは、面積に応じて額も増えます。
ちなみに、たとえば「市街化区域内の200平方メートル(約60坪)の宅地」ですと、80万円弱になるようです。
くわしくは、法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内」(PDF冊子)の45ページ以降、または法務省ホームページ「相続土地国庫帰属制度の概要」をご覧いただきたく思います。
また、(当たり前のことではありますが、)司法書士などに申請書類の作成を依頼する場合には、その報酬も発生することになります。
実際、申請書類の作成も、全くご自身でできないことはないですが、簡単でもなさそうです…。
結局、自分で管理費や固定資産税を払うのとどちらが良いのか、比較して検討する必要がありそうですね…。
3 「相続不動産」をどうするか、早目の検討を!
いかがでしたでしょうか。本制度の詳細については、法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内」(PDF冊子)、または法務省ホームページ「相続土地国庫帰属制度の概要」をご覧いただきたく思います。
放送でもお話ししたとおり、私自身は、現状でこの制度を使うには「正直、ハードルが少し高いかな…」といった印象を受けています。
しかし、不要な不動産を保有し続けることによって、固定資産税のほか管理コストなどもかかり続けることになりますので、不要な不動産を相続する(相続した)方にとっては、一つの選択肢にはなるのではないかとも思います。
また、将来不動産を相続する可能性のある方は、相続された不動産をどうするのか(誰が相続するのか?不動産を活用するのか?それとも売却するのか?)、相続前のできるだけ早い段階から考えておくべきではないかと思います。
少なくとも、相続された不動産を(何の登記もせず)そのまま放置することはできなくなったので、ご注意を!
今回もご覧いただき、ありがとうございました。
さて、来月の「サン・サン・トーク!」は8月2日(水)の午前11時から、テーマは、「知って備えたい、ご両親の介護のこと」です。
お盆のため里帰りをされる方も多いかと思いますが、久しぶりに帰省をすると、ご両親の介護のことで不安を感じることも…。そんなときにどのような準備をしていけばよいのか、事前に知っておくと役立つ知識をご紹介しようと思います。
くわしくはこちらをご覧ください。
そして来月もコラボ企画として、8月4日(金)と、8月11日(金)に、コラムを掲載しようと思います!
それでは、来月の生放送、そしてコラムもお楽しみに!