登記名義人の住所等変更も義務化されます!

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

今回から2週にわたって、一昨日(5日)に「FMおたる」で放送した「FP辰田のサン・サン・トーク!」とのコラボ企画として、コラムを掲載しようと思います!

一昨日は、「あなたは大丈夫?不動産の相続登記が義務化されます!」というテーマで、FMおたるアナウンサーの田口智子さんとお送りしました。

まだお聞きになられていない方は、よろしければこちらからお聞きください。

さて今回は、放送でお話ししきれなかった「登記名義人の住所変更等の手続き」について書こうと思います。

「不動産の相続登記」が義務化されることは放送内でお話ししましたが、実は「登記名義人の住所等変更」も義務化されます(ちなみに、「住所等」の「等」は、氏名を指します)。

すでにご自宅などの不動産を所有し、登記をされている方は、ぜひ参考にしていただきたく思います。

1 そもそも、なぜ登記が義務化されたの?

最初に、放送でもお話しをしましたが、そもそもなぜ「不動産の登記」が義務化されるのか、その背景を改めておさらいします。

まず、日本では、所有者不明の不動産が増え続けているという現状があります。

2017年に公表された民間(一般財団法人国土計画協会)の調査で、2016(平成28)年時点の「所有者不明土地」の面積は、九州の土地面積(約368万ha)を超える約410万haに達し、防止する取り組みが進まない場合、2040(令和22)年には約720万haに増えると推計しています(ちなみに、北海道の面積は約780万haです)。

ちなみに「所有者不明土地」とは、不動産登記簿により所有地が直ちに判明しない土地や、所有者が判明してもその所在地が不明で連絡が付かない土地を指します。

所有者不明の土地が増え続けた理由はいくつか考えられますが、主な理由として、相続登記は現状義務ではないうえ、売却もままならない不動産であれば相続登記をしなくても不利益がほとんどないことがあります。

まして「相続登記」は、登記変更時に発生する「登録免許税」のほか、司法書士に依頼すると報酬がかかるため、なおさら相続登記をしないということもあります。

このような土地は、所有者を探すのに多大な時間と費用が必要になります。また、土地の管理がされず放置されがちです(例えば、今にも朽ちそうな古い建物が建っている、不法投棄をされてゴミ屋敷のようになり悪臭が漂っている、草木が生い茂り、虫などがわいているなど)。このような土地では、所有者が誰かわからなければ文句も言えませんし、かといって勝手に立ち入って対処することもできないので、困った状態に陥ってしまいます。

また、土地の共有者が多数いたり、一部の共有者の所在が分からない状態ですと、土地の管理や利用のために必要な合意をすることが難しくなり、公共事業の復旧・復興事業が円滑に進まない(代表的な例が「東日本大震災」といわれています)ほか、民間の取引も阻害されてしまいます。

ということで、国としてもこの状況を看過できなくなり、2021年に法律(民法と不動産登記法)が改正され、来年の4月1日から、不動産の相続登記(正確には、相続による「所有権移転登記」)が義務化されることとなったというわけです。

2 「登記名義人の住所等変更」も義務化されます!

上述したとおり、2021年の不動産登記法の改正によって「登記名義人の住所等変更」も義務化されることになりました。

というのも、先ほどの「所有者不明土地」のうち、約3分の2は「相続登記」がされていないことによるものですが、残りの約3分の1は登記名義人の住所変更がされず、所在が分からないことが原因とされているためです。

「相続登記」を行っても、その後転居などで住所が変わってしまうと、結果的にその所有者と連絡を取るのに苦労してしまいます。このため今回、「相続登記」の義務化と合わせて、「登記名義人の住所変更手続き」も義務化されることになったのです。

その内容を簡単にまとめますと、以下のとおりとなります。

「登記名義人の住所変更等の義務化」について

・ 不動産の登記名義人の住所・氏名に変更があったときは、その変更があった日から2年以内に、その変更の登記を申請しなければなりません。

・ 施行日はまだ決定していませんが、現状、令和8年に施行される予定です。

・ 住所・氏名の変更登記の申請義務化は、「相続登記」と同様に、遡及適用されます。

実際問題として、転居などをしたときに、登記名義人の住所変更の登記など行っていない方も多いのではないでしょうか。

また上述のとおり、この住所変更等は「相続登記」と同様、法律の施行日以前の登記名義人にも遡及適用されることになっています。

また「罰則」ですが、正当な理由がなく住所・氏名の変更登記の申請を怠ったときは、5万円以下の過料の対象となります(ただ、放送でも触れましたが、実際にどのような形で運用されるのかは分かりません…)。

3 「登記」を最新の状態にすることは、大切です!

いかがでしたでしょうか。

このように、今後(令和8年から?)は、登記名義人の住所などが変わった場合にも、その旨の登記をしなければならなくなります。

ただ、不動産の売買などをしたり、隣接する土地との問題を解決したいときなどは、必ずその不動産の所有者を調べなければなりません。そのためには「登記簿」はとても重要な書類ですので、「登記名義人」の状態を常に最新の状態にしておくことは大切なことといえます。

そう考えると、「相続登記」や「登記名義人の住所変更等」の義務化は仕方がないことかとは思いますが、今後はITを利活用しながら、ワンストップで、かつ簡易に手続きができるよう、国なども引き続き検討を進めてほしいと思うところです。

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

来週14日(金)も、今回の「サン・サン・トーク!」とのコラボ企画としてコラムを掲載したく思っています。よろしければ、ぜひご覧ください!

それでは、来週のコラムもお楽しみに!